地方自治体の会計事務入門

自治体職員向けに会計事務の制度をまとめました。

予算から決算までの大まかな流れ

 予算から決算までの大まかな流れは、次の通りです。

①予算調製→②予算案議決→③予算執行→④決算調製→⑤監査委員の決算審査→⑥決算認定の議決→⑦決算の要領の公表

 それぞれについて、説明します。詳しくは予算や決算の記事で説明しますので、今回は概要です。

①予算調製
 予算案は地方自治体の長が調整します*1地方自治法第百四十九条第1項第二号)。実務において、所管の部署が見積もり(税収を税の部門、事業に要する経費を事業課等)、それを財政所管の部署の査定を経て取りまとめることになります。
 調整した予算案は、都道府県及び政令指定都市の場合は年度開始前30日、政令指定都市以外の都市及び町村の場合は年度開始前20日以内に、地方自治体の長から議会に提出しなければなりません。

②予算案議決
 地方自治体の長から提出された議案は、議会の議決(地方自治法第九十六条第1項第二号)と当年度4月1日の到来を経て、効力を発します*2。予算案の議会での審議の方法は自治体によって異なりますが、特別委員会である予算委員会を設置して行うことが多いようです。

③予算執行
 予算執行とは予算の内容を実行することで、収入や支出の事務が主なものです。地方公営企業以外は地方公共団体の長が権限を有しますが(地方自治法第百四十九条第1項第2号)、地方公営企業は管理者が有します(地方公営企業法施行令第十八条第1項)。
 政策的に重要な事項や高額の場合を除き*3、実務上は、専決や委任により権限が委譲されたものの決裁で執行しています*4

④決算調製
 地方公営企業以外は、出納整理期間後3か月以内に(翌年度の8月31日まで。地方自治法第二百三十三条第1項)、会計管理者が決算を調製し地方自治体の長に提出します(地方自治法第百七十条第2項第七号)。
 地方公営企業は、事業年度終了後2か月以内に(翌年度の5月31日まで。地方公営企業法第三十条第1項)、公営企業管理者が決算を調整し地方自治体の長に提出します(地方公営企業法第九条第1項第五号)。
 地方公共団体の長は、会計管理者及び公営企業管理者から受け取った決算書等を監査委員の審査に付すため(地方自治法第二百三十三条第3項)、監査委員に提出します(地方自治法第百四十九条第1項第四号)。

⑤監査委員の決算審査
 決算書等を監査委員では、予算執行が適切か、適法かといった観点から審査を行い、意見を付けて地方自治体の長に返します。

⑥決算認定の議決
 地方公共団体の長は、決算書等に監査委員の決算審査の意見と主要な施策の成果を説明する書類(地方公共団体の長が作成)を付け(地方自治法第二百三十三条第3項及び同条第5項)、議会の認定に付します(地方自治法第百四十九条第1項第四号)。
 議会ではそれを審議し、認定に付します(地方自治法第九十六条第1項第三号)。審議の方法や観点は地方自治体によって様々ですが、予算と同様、特別委員会を設置して行うことが多く、財務的な観点からだけではなく政策的に妥当か否かという観点からも行われることが多いようです。

⑦決算の要領の公表
 地方公共団体の長は、議会の認定に付した決算の要領を住民に公表しなければなりません(地方自治法第二百三十三第6項)。地方公共団体の公報に掲載したり、掲示板に掲載するなどの方法が取られています。

*1:地方公営企業教育委員会であっても予算案の調整を行うのは地方自治体の長ですが、地方公営企業の場合は地方公営企業の管理者が作成する 原案に基づいて調整する必要があり(地方公営企業法第二十四条第2項)、教育委員会の場合は教育委員会の意見を聞かなければなりません(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十九条第1項)。

*2: 支出の原因となる契約は予算が効力を発してから締結できますが、施設管理の委託や警備等、4月1日が契約期間の開始となる契約の場合、入札や見積もり合わせに要する時間を考慮すると、年度到来を待っていては事業の開始に契約事務が間に合わないという問題が生じます。4月1日までに、つまり予算が有効になるまでにどこまで手続きを進めてよいのか、法令の解釈や実務上の取り扱いは地方自治体により異なりますので、該当する事務を担当する場合はご注意ください。

*3:どのような場合に権限が委譲されているかは、各自治体の規則で定められています。また、重要な財産の処分等、議会の議決が必要な場合もあります。

*4:専決及び委任については、こちらをご覧ください。

専決と委任 - 地方自治体の会計事務入門